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洗面所で手を洗って、使ったティッシュをゴミ箱へと視線を落とすと、そこには使い捨てのコンタクトレンズの入れ物が捨ててある。
それもカラー付きの度入りだ。
私も尚哉も視力はいいから、誰か他の人のものだ。
疑惑に対して抗っていた心に音を立ててヒビが入る。
「じゃあ、もう帰るね」
そう言い残し、一刻も早くこの場から立ち去りたい。
気持ちを隠して後ろ手にドアを閉めた。
そしてマンションを出て駅まで走った。後ろを振り返ることもせず、ただただ尚哉から距離を取りたかった。
駅の改札を抜けて電車に乗り、外を見ながら深呼吸をした。
スマホの通知音が鳴り画面に視線を向けると【追いかけたのにいない。もう電車に乗った?返事待ってる】と尚哉からのメッセージが表示され、思わず涙が流れた。
(浮気をしているくせに、どうしてこんなに優しくするの?)
尚哉が理解できなくて、ただただ涙が流れた。
家に着いてから【わざわざごめんね。ありがとう】とだけ送り返し、スマホをバッグに放りこむ。
そして、モヤモヤする気持ちを追いやるようにシャワーを浴びて早々にベッドにもぐりこむ。
明日、三屋先輩に話をしよう。それにしっかりとした証拠を掴んでやる。
そしたら別れ一択だ。
その浮気相手に熨斗を付けてくれてやる。
でも、もし、もし、シロならきちんと謝ろう。
疑ったことを心から謝ろう。
それで許してくれないなら仕方ないよね
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