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翌日、早めに出勤して万が一にも尚哉に会わないように時間を調整した。
岩城さんのSNSに、草津のガラス細工の店に行ったことがアップされてたのを目にしたら、もらったピアスを投げ捨てたくなった。
投げる寸前で思いとどまったけど、二度と見る事のないように引き出しに放り入れた。
今、尚哉に会っても表情も作れそうもない。そしたら何を聞かれるかわからない。避ける一択だ。
帰る時間も調整しようと思っていたら、この日、補佐を頼まれていた斎藤さんの案件に先方から追加事項があり、多数の書類の見直しと作り直しが決定して残業が決定となった。
ナイスタイミングとにこやかに残業したけれど、この仕事が意外と長引き、週末の金曜までの残業が確定になった。
という事は、必然的に尚哉とは会わないという事だ。
メッセージアプリには【今日も残り?】【体調は大丈夫?】と届いている。
それに対し返事を書くが、顔を見なければどんな返事でも書ける自分が恐ろしい。
とはいっても、ありきたりの事しか送るつもりはないけどね。
でも、毎日のように交わしているメッセージも、半年前から頻度が減った。
それが意味するのは浮気をしていたという事だったのだろうか。
当初の予定通り、金曜で追加書類や訂正書類の作成と確認が終わった。
翌日の土曜はお見合いだったなぁと思いながら帰路についた。
その途中、尚哉からは【明日はお見合いだったよね。いつ戻る?】とメッセージが届いたので、【明日は実家に泊まるから戻るのは日曜の夕方かな】と返信しておいた。
【OK】と一言だけのそっけない返事に少し寂しさを感じながら空を見上げた。
そろそろ夏も終わる。日も少しずつ短くなり、星が見え始めた空に浮かぶ月を目にしてふっと笑った。
明日のお見合い、どんな人だろう。いい人だったら本気で乗り換えたい。
なんてね。
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