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「でも、別れ話をしても彼が素直に頷いてくれるかわからないし、今日の事も見間違いだと言われるかもしれない。このSNSだって偶然だとか、他人だとか言われそうで…」
食べ物をお腹に入れることで、頭にかかっていた靄のようなものが晴れる。それと共に少しずつだけど冷静に考えられるようになった。
やはり、どんな時でも空腹はよくない。
「では、私が手を貸そう。証拠を揃えればいいんだろう?」
「えっ…?」
「彼には今日の見合いの事は言ってあるのだろう?それなら彼に『断る事は決まっているが、仲介の人から必ず数回は会う事と言われた』と伝えるんだ。あえて君がいない日を伝えて、彼がどう動くのかを見張ればいい。彼のようなタイプは今日のように動く可能性は高い」
「そんなものですか?」
「君が疑いの目を向けていることに気がついていないなら尚更だ」
藤森さんの妙に説得力のあるセリフは自分の経験からか?それとも、世間一般の意見?
「ダメなら他の手を考えるだけだ。だが、夏姫はそれでいいのか?証拠が集まればもう戻れないぞ」
「……いいんです。どのみち、私を裏切っていたなら別れるつもりですし、それに今から泊まるなんて知ったら……私の方が浮気相手かもしれない」
あんな場面を目にしても、かろうじて踏みとどまっていられるのは藤森さんが親身になってくれているからだと思うと、感謝してもしきれない。
もし、一人でいる時にあの場面に出くわしていたら、今頃ここまで冷静な判断はできていなかった気がする。
それにしても、いつの間に夏姫呼びなのだろう。
まあ、気にしないでおこう。
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