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入社して半年が過ぎた10月、営業部の倉田尚哉さんから交際を申し込まれた。
同じ会社とはいえ、会社の規模はビルの数階に渡り、社員数も300名以上、しかも入社半年の私は他部署の人の名前など、正直記憶になかったので、彼が女性社員に人気があったことなど後から知った。
尚哉は、私が外国からのクライアントが来社した際、てきぱきと対応している姿を見て惹かれたとかなんとか。
正直、自分の容姿レベルは普通だと思うし、スタイルも注目を浴びるようなものでもない。
身だしなみには気を付けているけれど、シンプル好きな私はどこから見ても目立つ要素などない…はずだ。
だから、彼から付き合ってほしいと言われた時は、周囲を見回して人違いではないかと確認したほどだ。
尚哉はウェーブのかかった栗色の髪に少したれ目の優しい印象で、いわゆるわんこ系?イケメンで、女子社員からの人気も高い。
営業部の部長からは彼の将来に期待を寄せられるほど仕事ができる(らしい)し、本人に至ってはさらに上の、海外案件を担当する部署への異動願を何度も出しているそうだ。
社内恋愛は禁止というわけではないけど、女子社員からやっかみを受けるのも嫌で面倒ごとにはなりたくないと尚哉とも話し、周囲には内緒にしたまま早三年の月日が流れた。
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