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その後、藤森さんは実家ではなくマンションまで送ってくれた。
本当なら実家に泊まる予定だったけど、今は一人でゆっくりと考えたい。母には戻るのはまた今度に延期すると連絡を入れておいた。
お見合いの事は祐二叔父様から話を聞いているだろうから、帰ると絶対にその話題になる。でも、正直そんな気分じゃない。
藤森さんは帰りの車内で、その話題には一切触れずにいてくれた。
無表情だから感情面には疎いのかと思っていたが、意外と優しい?のかな。
そして別れ際に『何かあったらすぐに連絡をしてくれ』と言ってくれた。
この計画を実行すると決めた時に連絡先を交換したけど、なんだか心強い戦友が出来たようなそんな気がする。
まだ外は明るいけれど、ゆっくりと湯船に浸かりこれから何をしていけばいいのか考えた。
藤森さんからは『調べることが得意な知り合いがいるから紹介するよ』と言われて頷いてしまったが、そこまで頼んでしまってもいいのか。
けれど断る言葉を言い出す隙を与えてくれなかったし、自分では何からやればいいのかわからないことも事実だし、ありがたく甘えさせてもらおう。
勿論、かかった費用はきっちりと支払うつもりだ。
ゆっくりと温まり、いつものボディーソープの香りに包まれると少し気持ちが和らいだ。
髪を乾かしながら鏡に映る自分の顔を見て、岩城さんと比べてしまう。
私もしっかりと化粧をして、可愛い服を着たらいいのかな?なんて思ったけど、似合わないことはしたくない。
まあ、少しの冒険は必要だろうけど、この年でそこまでするのも躊躇われる。
紅茶を入れて、カップを片手にソファーに座った。それから三屋先輩に今日の出来事をメッセージで送ると、すぐに返事が届いた。
いつも思うけど先輩は返事が早い。
【倉田のやつ、何考えてるの?姫、そのお見合い相手に乗り換えちゃいな】
【私も倉田のこと調べるからね】
先輩の言葉が心に響く。
なんだか悩んでいる自分が馬鹿らしくなってきちゃう。
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