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5.夏姫の一日
お見合いの翌日、本来なら母の家に泊まってのんびりしているところだったけど、マンションに戻ってきたので予定があいた。
空を見上げるとキレイな青空が広がってる。残暑はまだ続いて日差しが肌に当たると痛いほどだ。
部屋を簡単に片付け、なにか気晴らしになるようなことはないかなとまた窓の外を見た。
「ラグビーを見に行こう!」
就職した頃に、友人に誘われて行ったオールブラックスの試合の迫力に圧倒され、それから試合観戦に出掛けている。しかもほとんどが一人で。
調べてみると、ちょうど今日、試合があった。早速、身支度をしてマンションを出る。
気分が乗らないときは、こういうストレス発散もいいものだ。
尚哉はサッカーが好きでサッカーの試合には行くけれどラグビーには興味がなくて一緒に行ったことはない。
藤森さんは時々ラグビー観戦に行くって言っていたけど、どこのファンなんだろう。
やっぱり自分の会社のチームのリエース東京サルダードかな。今度会ったら聞いてみよう。
この日の対戦カードは、そのリエース東京サルダードと早風ヴィントシュトースでシーズンが始まる前の前哨戦的位置付けの試合だ。
リエースは藤森さんの会社でもあるけど、白石商事の取引先でもある。やはりここはリエースに勝ってほしい。
誰かと一緒に観戦すると楽しいんだろうけど、私はおひとり様が意外と性に合っている。ラグビー観戦も映画鑑賞も買い物も、なんでも一人で出掛けてしまうが、一人焼肉はまだデビューしてなかったりする。
尚哉と出掛けるのも好きだけど、たまには一人がいい。まあ、最近は尚哉と出掛けることも少ないんだけど。
この日の試合は22メートルラインでの攻防が多く、ハラハラドキドキといった表現が正しいくらい、見ていて面白い試合だった。
そして27-25でリエースの勝利。
久しぶりに楽しめたなぁと思いながら、グッズが売っているショップに寄ってリエースの藤の花がモチーフになっているキーホルダーとエコバッグを買って、キーホルダーはすぐに部屋の鍵に付けた。
でも、色々と付けすぎて折角のリエースのキーホルダーが目立たない。家に帰ったら整理しよう。
ラグビー観戦の帰り、何軒かお店をのぞきながらいくつか買い物をして、一人で過ごす休日を満喫した。悩んでいるよりも楽しんだ方がいい。
尚哉からはまだ連絡がないけど、もしメッセージがきたらなんて返事をしようか。
まあ、お見合いの話を聞いてくるだろうから、藤森さんと話したことを伝えよう。
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