5.夏姫の一日

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 この件に決着がつくまでは正直言って尚哉と会うことは避けたい。会いたくない。  だけど、そういう訳にはいかない。それに、お見合いの話をしてから尚哉の態度が変わったような気がする。なんでだろう。  もしかして嫉妬?  いや、そんなことはないよね。  自分の都合のいい考え方もあるけど、その日に岩城さんと会っているんじゃそれはない。  カレンダーを見ながら色々なパターンを思案してみたが、流石に先が見えない。三屋先輩に教えてもらった尚哉の予定も照らし合わせてもだ。  今度の日曜は様子見も兼ねて二人で出掛けるとしても、それからは尚哉の出張もあるからその都度で考える必要があるかも。  夜に会うのはできるだけ避けたいんだよね。  キスは我慢できても抱かれることには抵抗がある。  いや、抵抗があるくらいの表現では済まない。嫌悪感しかない。  先輩に協力してもらいながら、証拠が手に入るまでは乗り切らないと。  それにしても、あの野元さんって人、どうやって調べるのかな?よく聞く浮気調査みたいに張り込みとかするのかな?  藤森さんと会う予定は四回だけど、尚哉はその四回とも岩城さんと会うつもりなのかな。  藤森さんからはSNSを見ない方がいいと言ったから、見たい気持ちはあるけど、必死な気持ちで我慢した。見て苛立つのも嫌だ。中途半端よりも確実な証拠を突き付けたい。  こういう時は現実逃避をするに限ると思う。   そう考えて、去年、買ったまま読んでなかった本を引っ張り出した。  店頭のPOPを読んで、面白そうだと思って買ったのに、まだ読んでいない一冊。こういう日には、最適だと紅茶を入れて、ソファーに腰を掛けた。    この本は、OLでもある主人公が、仕事や恋愛に疲れた時のストレス発散に裏路地にある隠れ家的カフェを巡るようになる。  そこで出会った人や、食べた料理を通じて将来の夢を持つようになる。  そんな内容なんだけど、人々とのやり取りを通して成長していく描写が、今のOLの姿をよく表現しているとか。  それにカフェで食べた料理のレシピも載っているのも興味を引いた。  私もカフェ巡り、してみようかな。  
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