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6.一度目のデート?
藤森さんと会う日がやってきた。
昨日の金曜は尚哉と食事に行ったけど、うまい具合に三屋先輩が連絡をくれて途中で帰ることができた。食事が終わる頃を見計らって何度か着信をしてほしいとメッセージをしておいたけど、先輩はその通りに着信してくれたので、さり気なく出ることが出来る。本当に感謝。
「また今度埋め合わせするね」
そう言って尚哉とその店で別れ、三屋先輩と合流する。だが、尚哉にまた今度と言った手前、いつ埋め合わせをしようか考える羽目になったけど、またその時に考えよう。
今日、尚哉は何をして過ごすのかな……
そしてお見合いの翌週の土曜日、藤森さんはマンションの場所をしっかりと覚えていてくれていたみたいで、10時には迎えに来てくれた。
マンションの前に停められた赤い外国車はどこから見ても目立つ。しかも、その横に立つ藤森さんは高身長の人目を引くイケメンだ。横の歩道を通り過ぎる女性の熱い視線をしっかりと集めている。
うん。その気持ち、よくわかるよ。
一応はデートと名の付くものらしい。そしてデートなのだからと、この前のかっちりとしたスリーピーススーツではなく、今日はカジュアルなシャツにスラックス姿だ。
やはりイケメンはどんな格好でも似合うのだろう。ここまでくると、キャラクターの着ぐるみを着た姿を見たいと思ってしまう。
車に乗ると藤森さんに「どこか行きたいところはあるか」と聞かれたので、「国立博物館です!」と即答した。
これがアニメとかなら、私の瞳はキラキラと輝いて表現されているだろうな。
国立博物館では、今【正倉院の世界】という特別展示をしていて、駅に掲示されていたポスターを見て、絶対に行く!と考えていた。
「藤森さんは歴史はお好きですか?」
「歴史かい?好きだよ。京都や奈良は仕事でも良く行く。中でも三十三間堂の二十八部衆像はお気に入りだ」
「三十三間堂なら、風神雷神像もいいですよね。藤森さんは知ってます?法隆寺夢殿の救世観音の光背のこと。歴史って知れば知るほど楽しいですよね」
「夏姫は救世観音の光背を知っているのか?」
「藤森さんも知ってるんですね。意外。でもあれ、実際は当時の取り付け方法だったらしいですよ。謎だと思うと歴史を学ぶのが楽しくなりますよね」
そう答えた私の顔が可笑しかったのか、藤森さんは笑い出した。
「はははっ。女の子でその事に興味を持っていた子には会った事がないな」
「そうですか?最近、歴女って多いですよ?私の知識なんて全然ですよ」
そんな話をしているうちに近くの駐車場について、そこから博物館まで歩いた。
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