6.一度目のデート?

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 車を駐車場へと駐めに行くからと先に行っててと言われたものの、初めての場所で勝手もよくわからずに、ビルの1階のエントランスでうーんと思っていると、エレベーターの扉が開き、私よりも少し年上らしい男性が出てきた。  その男性は私を見てニコッと笑いを浮かべ「日向さん?」と声をかけてきた。  この人が野元さんなのかな? 「鷲生ならすぐ来るから先に事務所へ行こうか。このビルの三階だから」  鷲生?ああ、藤森さんの事か。でも、鷲生なんて渋い名前だ。藤森さんにはぴったりかもしれない。  そしてエレベーターに乗り込み、三階へ向かう。向かった先の事務所の扉には【フィデース調査事務所】と書かれている。  事務所の中へ入ると、そこはごく普通の事務所で、受付の席に座っていた私よりも少し年上の女性が「どうぞこちらへ」と応接室へと案内してくれた。  調査事務所に応接室があるのか…と思ったものの、人に聞かれたくないこともあるだろうと納得する。  席に座ると、野元さんが名刺を取り出して渡してくれた。どうやらここの所長さんらしい。  その野元さんの名刺に書かれている説明を読む限り、この事務所は企業案件を主に引き受けているようで、今回の私の様な個人的な案件は対象外の様だ。  なぜ藤森さんはこの人に頼んだのだろう。申し訳なさ過ぎて名刺から顔を上げることが出来ない。  目の前に座る野元さんとの間に微妙な空気が流れ始めた頃、応接室の扉が開き藤森さんがやってきて私の隣に腰を掛ける。  そして先ほどの女性が「どうぞ」とお茶をテーブルの上に置いて出ていった。 「夏姫、彼は野元。私の知り合いだ」 「知り合いねぇ。まあ、いいけどさ。遠い親戚だと思っててくれればいいよ」  遠い親戚??と、疑問符の飛ぶような顔をしている私を見て藤森さんは、端的に言えば姉の義弟だよと話してくれた。 「お姉さんの旦那さんの弟さん…」 「正確に言えば、姉の夫の妹の夫だけどね」  複雑。確かに遠い親戚だ。  しかし、今のところの私の一番の心配は、ここでは一般案件は扱っていないのでは?ということで、素直に疑問に思ったことを野元さんに聞いてみた。 「個人的には受けないだけで、企業のお偉いさんからも似た案件はあるんだ。だから気にしないでも大丈夫」  そう言われると、頷くしかできない。そもそも藤森さんがお願いをしてしまったのだから、私に決定権はないらしい。  なぜ??
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