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「では日向さん。この件ですが、この間のご連絡を頂いた時から調査に入っております。平日は退勤時から帰宅まで、週末は朝から夜まで調査を続ける予定です。すべて終了した後に報告書の作成となりますがよろしいですか?」
「わかりました。その報告書は取りに伺えばよろしいですか?」
「夏姫、私が野元から預かっておくから、届いたら連絡するよ」
どうやらこの依頼は藤森さんが主導権を握っているらしい。当事者の私じゃないのはなぜ?ああ、費用の問題?
「そうです!費用!私事ですから私に支払わせてください」
二人とも突然大きな声をだした私に驚いたように目を見開いて私の顔を見たが、その顔はなんだか面白い。いきなり費用の事を言い出した私も私だが、肝心の支払いについて何も言わない二人も二人だと思う。
「これは私が言い出したことだ。支払いの事は気にしなくていい」
「そういう訳にはいきません。調査ってお高いと聞いたことがありますし、私事で藤森さんにご迷惑をおかけする訳にはいきませんから」
「夏姫……」
「いえ、譲りません」
そんなことを言い合って、なかなか結論が出なかったけど、藤森さんが「お見合いを断るのに何度も夏姫に時間を取ってもらうことになったのだから、そのお詫びだと思ってほしい。その時間に私の行きたいところに付き合ってくれればいい」と言いはじめた。
そう言われると、これ以上は何を言っても無理だろうと感じたので、今は引いて、調査書が出来た時にもう一度話をしてみようと思う。
その頃なら費用の最終金額も出ているだろう。
「わかりました。それでいいのなら付き合います」
「では、それで決定だ。今度の土曜に迎えに行くよ」
なんだかすっかりと丸め込まれた気がする。
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