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去年のクリスマスには「そろそろ挨拶に行かないとな」って尚哉が言っていたけれど、それから仕事が忙しくなってその話も立ち消え。
「じゃあ、いつにする?」と言い出せないままもうすぐ一年が経とうとしている。
それに、忙しい時期は終わったはずなのに、なぜか会う回数も少なくなっている。
でも尚哉から届くメッセージは相変わらず甘い言葉が並んでいる。うん。優しいのよね。
まあ、三年という年月もあってか、腐れ縁的な感じもしないではないけど、やっぱり好きなんだろうな。
彼と同じ営業部にいる三屋先輩は毎週のように私を飲みに誘ってくる。
同じ営業部と言っても所属する班が違えば、忙しい時期も違うのかなぁ。
その先輩は、先月、結婚間近の彼が浮気をしたと言って、毎回酔っては愚痴を聞かされている。
なんでも「忙しい時期が終わって彼とゆっくりしようと思ったらその間に浮気をしていた」ということらしい。
しかし、よくよく聞くと、未遂というか誤解というか、話し合えば解決しそうな感じもしないではないのよね。
「ねぇ、姫。姫も彼氏いないんでしょ?一緒に合コン行こうよぉ」
「先輩。もうそのくらいにしておいた方がいいですよ」
この日、週末の仕事終わりに先輩に誘われて、駅近の居酒屋に来ているんだけど、先輩は何杯飲んだのだろう。
もともとお酒には強いらしいから、これくらいじゃあ酔わない?あっ、姫というのは私のあだ名で、夏姫だから姫。少し恥ずかしいんだけど、もう慣れた。
この日は先輩の彼が性懲りもなくやり直そうと訪ねてきたと言い合いになったらしい。
そもそも誤解もあるだろうし、彼さんはとても誠実な人だと聞いているのできちんと話し合ってほしい。
でも、もし本当に浮気をしていたなら、一度だけなら許すことができる?尚哉が浮気をしてたら?
……多分、許せないだろう。
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