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話をしている時に、彼女が外に視線を向けた途端、表情豊かだった彼女の顔から色が消えた。
その目は憂いの色を帯び、カップに添えた手が僅かに震えている。
彼女の視線の先に何があるのか気になり、自分もその方向を見てみると、ガーデン側のテーブルに若い男女が笑い合いながら向かい合い座っているのが見えた。
知り合いかと思ったが、さっきの話からするとおそらく彼氏なのだろう。
優しそうな男だが、私から見ると少々軽薄な感じがする。
向かいに座る女性はこちらからは見えないが、後ろ姿だけでも夏姫さんとは違うタイプだろう。
彼女は二人の姿を見て茫然としていたが、私が声をかけると一瞬でその表情を変え、その場から出ようと言った。
そして夏姫さんの手を取り、この店を後にした。
彼女を早くこの場から連れ出してやりたい。あの二人の姿が見えないところに連れていきたい。そう思って彼女の手を握ったが、その手は冷たくなっていた。
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