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顔見せのために野元の事務所を訪ねた。
彼女にはメッセージアプリで連絡先は教えていたが、やはり顔を見て話したほうが早い。
野元の観察眼で彼女の為人を確認してもらうことが本来の目的だが、そんなことは言う必要はない。
しかし、話をしている二人を見ていると、なぜか気に入らないと感じるのはなぜだろう。
自分だけが共有していた彼女の悩みを野元が知ったからだろうか。いや、そんなことはない。
話しているうちに、野元の目は鋭いものから段々と毒が抜かれたように優しいものに変わってくるのもわかった。
野元も警戒心がとけたのだろう。それほど彼女は裏のない普通のタイプの人なのだ。
そして調査のことを話し始めたら、夏姫がかかった費用を払うと言い始めた。
もとよりそんなつもりはなかったし、本音をいうと自分が楽しんでやっているという感じが否めないのだが、彼女にそう言われると罪悪感が湧いて出てくる。
いらないと言っても意外と強情で、自分の都合で何度も時間を取ってもらうことと、行きたい場所に付き合ってもらうことで納得してもらった。
しかし、多分だが、一旦引いただけだろう。
またこの話はすることになるそうだ。
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