8.あと一週間

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「なんだよ。もうすぐ40のおっさんじゃないか。早く断っちゃえよ」  尚哉より仕事ができる(超絶イケメンの)おっさんだけどね。 「わかってるよ。独身主義の人だから、すぐ断ると余計に面倒らしくて。ちゃんと会ってから断ったっていう事実があれば、次のお見合いを回避できるとかなんとか言っててさぁ。まあ、お互いに断ることは決まってるし」 「まあ、そういうなら……独身主義って女に興味なしってやつなのか?」 「仕事が楽しいタイプみたい」 「ふーん。でも、何かあったらすぐ帰って来いよ」  尚哉が上目遣いをして目を若干潤わせるだけでわんこ系の要素が最大限に発揮されるのは正直(こた)える。  まるでこっちが悪いことをしているような気持ちになってしまう。恐るべしわんこ系。    私はわんこ系に惹かれたわけではないけど、これは尚弥が意図的にやっていることだったりして。  そんな疑問が湧いてくる。  しかし、この半年、私たちの間にはまるで倦怠期の夫婦の様な空気が漂っていたのに、あのお見合いの話が出た後くらいから尚哉の態度が変わった気がする。  メッセージは相変わらずやり取りしているけど、その頻度も多くなってきてまるで昔に戻ったよう。  それに「泊ってく?」などと聞いてくることもここ数か月はなかったような気がする。  三屋先輩に話すと「ようやく姫の大切さに気が付いた?遅いっての」と尚哉をこき下ろしていたけど、本当に最近の尚哉の態度は疑問符が付くことばかりだ。  そして尚哉は、木曜からは出張が入っているらしく、水曜にでも会えないかと聞かれたが何事もまだ未定だ。  返事すると言っておいてその日は駅で別れた。  お互いのマンションの最寄り駅はまったくの逆で、乗る路線も違う。こういう時はそれがありがたい。  電車に乗って窓の外の移り行く風景を見ながら尚哉の態度の変化の理由を考えながら帰路についた。  
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