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「え……これ…」
「どうしたの?」
「…ううん。あまりにも美味しそうで、羨ましくなった」
「そうよね。これ、彼氏だろうね。匂わせ投稿ってやつ?腕だけとか後ろ姿とかだけ映してさぁ。うちの社員かな?」
その写真のコメント欄には【彼からのサプライズ。すごく嬉しい】との一言。
二枚目の写真には、その彼から贈られたであろうブレスレットが映っているが、その端に写り込んでいる男性の手首には見覚えのある腕時計があった。
これ……私が尚哉にプレゼントした時計……?
それからどうやって家に帰ったのか記憶になかった。気が付くと、真っ暗な部屋の中で岩城さんのSNSをずっと見ていた。
写り込んでいる腕時計を何度も見て、間違いなく自分が贈ったものと同じだった。
でも、ベルトには見覚えのない傷が付いている。ただ偶然に同じだけだろうか。
この腕時計はそんなに高くはなかったけれど、限定品で文字盤の色が通常品とは違うところが尚哉は気に入っていた。
他にも足元や手元など、身体の一部だけが写り込んでいる写真がいくつもあったけど、どれもこれも見れば見るほど尚哉にしか見えなくなってくる。
投稿された日を見てみると、その匂わせ投稿が始まったのは彼女が入社してしばらくしてだけど、頻繁に投稿されるようになったのはここ三ヵ月だ。
本当かどうかわからず悶々としていると岩城さんが新しい投稿をした。
【今日は彼と草津温泉。ゆっくりと過ごせて嬉しい】
え……?旅行?草津?
尚哉は友達の結婚式で群馬に行くって言ってたけど、まさか岩城さんと一緒なの?
疑惑が徐々に大きくなっていくのを感じながら、それとは逆に信じたいという気持ちも大きくて無意識のうちに尚哉にメッセージを送っていた。
【結婚式の写真、楽しみにしてるね。飲みすぎないように。おやすみ】
だが、いつまで待ってもメッセージに既読が付くことはなく、そのまま朝を迎えた。
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