2.舞い込んだお見合い

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「実は、知り合いから見合い話を持ち込まれてな」 「お見合いですか?」 「そうなんだ」  なにやら困り顔でそう言った叔父に何があったのか聞いてみた。すると、相手方の父親は真剣に息子の相手を探しているらしいが、当の息子は全く結婚しようともしない。それで痺れをきらした父親が自身の友人にお見合い相手を探してほしいと頼んだらしい。  けれど、その計画を当人が知ったらしく、断る前提でなら受けると父親の友人に言ったそうだ。  もちろん父親には断る前提だということを言わないようにとの口止め付きで。  会って断るなら父親に申し訳が立つだろうと考えたらしいけど、そんな理由での見合いなど相手が簡単に見つからないらしい。  お見合いは「結婚相手を探しています」って人の方が多数派だろうし。  それで困ったその父親の友人が、叔父に相談してきて私に話を持ってきたらしい。 「身元も確かで、尚且つ、断られることを理解して見合いを受けてくれる女性を探しているんだ」 「そんなのどこにでもいるんじゃないですか?最近は結婚したくない女性も多いでしょうし」 「実はな、その相手が、リエース建設の人間なんだよ。それも、なかなかの好青年(優良物件)らしい。罷り間違って断ることを拒否されて話しが(こじ)れてしまうと、ちょっと困るんだ」 「はあ……」  リエース建設は白石建設の取引先のひとつだけど、グループ企業としてはリエースのほうが大きい。しかも叔父様の話では、その人は役職付きの人らしい。  それなら、断る前提なんて言っても、女性に気に入られる可能性もありそう。  しかし、断る前提とはいえ尚哉の事を考えると素直にYESとは返事が出来ない。  私の表情を見て、明日返事を聞かせてくれと言ったので、そうすることにした。  そしてこの日、終業時に尚哉は有休をとって休みで、なんと岩城さんも有休をとっていることを知り、忘れていた疑惑に更なる追い打ちをかけた。  ようやく既読が付いた尚哉のメッセージの返事は【ごめん、スマホが壊れちゃって写真撮れなかった】という一言。  ほんとかよ……と突っ込みを入れた私は正しいと思う。
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