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「さあ、姫……何があったのか、洗いざらい吐いてもらうわよ」
目をギラつかせた先輩に連れ込まれたのは会社から離れたビルにあるカラオケボックスで、面と向かってそう問いかけられたのは誰も来ないようにとテーブルの上に食べ物や飲み物がしっかりと準備された後だった。
三屋先輩は口も堅く信頼できる。それに、尚哉と同期なのだ。
私は心にしまい込んでいた疑問の全てを吐き出した。
尚哉から交際を申し込まれ恋人同士になり三年が過ぎたこと、このところ忙しいと言ってなかなか会えないこと、岩城さんのSNSに写っている腕は尚哉の可能性があることを話した。
そして、今日は二人とも有休を取っていることも、叔父から見合い話が持ち込まれたこともついでに話した。
「姫は倉田と付き合ってたの?」
「……はい。隠していてごめんなさい」
「いやいや、それはいいんだけど。……岩城さんのSNS、本当?」
「わかんないけど……でも、あの腕時計は私がプレゼントしたものだし、週末は友人の結婚式で群馬だって言ってたのに、スマホが壊れて写真が撮れなかったって。それに、岩城さんも有給取って群馬に……」
「はぁ~、倉田って真面目だと思っていたんだけど、わんこ系じゃなくて肉食系だったのね」
肉食系……
「それなら、お見合いしようよ。倉田がOKだしたら【相手の人が格好良くて好きになったらどうしよう】って冗談ぽく言って、どうなるか様子を見るのは?」
「そんなので上手くいくと思います?」
「大丈夫だよ。でも、姫も相手の人がいい人なら本気で乗り換えちゃえば?倉田がクロとは限らないけど、さぁ」
「うん……そうなんだけど、三年って短くないでしょ?だから信じたい気持ちもあって…」
尚哉にそう言ってどういう反応をするかは正直、気になる。本気で止めてくれるなら嬉しいけど、もし反応が薄かったら……
でも、考えてばかりいても前に進めないから、とりあえずお見合いの話を進めてもらおうかな?
断っていいみたいだし、気は楽よね。
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