第1章 雪の日。

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第1章 雪の日。

西暦206年12月12日。 ここは曹操が治める地域の首都で、 許都という場所でございます。 夏侯淵「惇兄、雪、雪が降ってる。」 この日はとても寒く許都でも珍しく雪が降っておりました。 郭嘉「雪を見ながら雪見酒も良いね。今宵は私に付き合うつもりはないかい?」 郭嘉(かくか)…字は奉孝。 優秀な軍師ではあるのだがお酒と美女が大好きで素行に問題がある36歳。 荀彧「呑みすぎです、 少しはお酒をお控え下さい。」 郭嘉に意見をするのは… 曹操軍の軍師・荀彧…ですが、 郭嘉「雪見酒はロマンだよ。荀彧殿にはロマンはないのかな?」 43歳と36歳であまり歳の差はないようには思いますが…基本的に真面目な荀彧と楽観的な郭嘉は… 荀彧「ロマンは大切ですね。私のロマンは文学に触れる事です。秦の始皇帝が何を考えて生きたのか…とか…」 郭嘉「うん、なかなか興味深いね。荀彧殿と雪見酒をしながらその辺りについて語る事を決めたよ、いま。」 意外にこれはこれでしっくり来ているようで… 荀彧「では政務をある程度片付けてからいつもの店へ行きますから待ってて下さいね、決して私が行く前に呑み始めないで下さいね。」 郭嘉の呑み過ぎる習慣を窘める荀彧、 すると… 澪里「…きゃあ…!」 まさか… 空から女の子が降って来ました。 夏侯淵「女の子って空から降るの?」 夏侯惇「普通は降らん!」 郭嘉「不思議な子だね、 ワクワクする事は大好きだよ?」 荀彧「郭嘉殿、お願いですから、 少しは落ち着いて下さい。」 空から雪と一緒に降ってきた女の子の話題でその日は上から下まで皆が騒いでおりました。 曹操「ふむ、空から女子が降って来たとな…。実に興味深いな…」 曹丕「父上、間者〈=敵のスパイ〉だったらどうするのですか?」 曹操の次男で甄貴…字は桜綾という絶世の美女を妻に迎えた曹丕…字は子桓は興味がないようですが… 曹丕以外の男性は… 曹操「そなたの名前は?」 澪里「澪里です。身寄りはありません。あ、洒落ではありません。」 夏侯淵「身寄りのない澪里…。いやいや…笑えねぇから無理に笑いに繋げなくて良いから…」 夏侯惇「淵の言う通りだ。俺と淵、どちらでも頼りやすい方を頼れば良い。」 郭嘉「私と荀彧殿もOKだよ。」 荀彧「私には正妻がおりますし、 郭嘉殿にも正妻がおられるでしょう?」 郭嘉「(しょう)は誰しもいるよ?曹操殿なんて妾だらけなのに…」 曹操「…恋は人生の醍醐味だ。」 荀彧「殿、そのような事を仰せになられるので郭嘉殿がイケイケドンドンという勢いになるのですよ?」 郭嘉「人生は勢いだよ?澪里ちゃんは、勢いのある男は嫌い?」 澪里「…いきなり来られましても緊張します。」 夏侯淵「澪里は俺が面倒見るんだ… だから…幾ら殿でも譲れねぇ…」 すると… 曹操「なら…譲ろう…。澪里、そなたは明日から夏侯淵の屋敷に泊まるが良い。そこまで大事に想うのなら…その想い、貫くと良い。」 こうして澪里は夏侯淵の屋敷で 生活する事になりましたが… 夏侯淵「さむ~。澪里が来る前に きちんと掃除をしておかないと…な」 夏侯淵は慌てて屋敷に帰り… 掃除を始めた…のですが… 夏侯淵「ハクション!あ~、 風邪ひいたかな?」 澪里「あまり寒い時期に無茶をしないで下さいね、風邪を引いてしまいますよ?」 頭に雪が降り積もる夏侯淵の頭を手で 優しく撫でて雪を払ったのは… 夏侯淵「澪里、手が冷たいじゃねぇか?すまねぇ、あまり無理はするな…」 曹操「澪里はとても遠い場所から来たそうでこちらの風習には慣れてはおらん。だが…純粋な想いを受け取る事は悪い事ではないなぁ…」 … 夏侯淵「殿?もう少し分かりよい言葉を掛けて下さると嬉しいのですが…」 郭嘉「夏侯淵殿、大切な言葉は相手に言わせてはダメだよ。男から言わなければならない…」 夏侯淵「あ~、分かった、分かった。分かりましたよ。澪里の優しさに一目惚れしたので一緒になって下さい。これで良いですか。」 2人共頭に雪が積もりながらも… 耳まで真っ赤に染めていました。 曹操「ふむ、めでたい。」
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