《序章》時間泥棒とキザなインコ

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 ある国で、ある王室にて一通の予告状が届いた。  ――そこにはたった一文だけ添えてある。 『王女の涙を頂きに参上しに参ります。―タイムキーパー(時間泥棒)―』  そう。巷で噂のタイムキーパーが予告状をこの国の王室へ届けられたのだ。あて先は王女のティアル・ラルベリエである。しかも標的も彼女であった。だがしかし……。 「おい、あの鉄仮面の涙を奪うって」 「奪えるものなら奪ってみろ、って話だよな~」 「かわいそうとはいえさ~。あんなの女の子を攫っても…」  ――別に痛くもかゆくもないな。  城の衛兵たちが笑いながら王女を罵り、笑っていた。その姿を見た無表情で無感情の王女は、気にも留めずに庭園へと向かった。  花々はたおやかで美しく咲き乱れているが、彼女の心を震わすものはない。しかしただ1つだけある。水のように澄んでおり透明なバラに似た花を愛で、彼女はぽつりと呟くのだ。 「……奪えるものなら奪ってみてよ。私は以来」  ――涙も感情も枯らしてしまったのだから。  彼女がそう呟いて無表情にその花を…”センチメントティア”と名付けられたその花を、彼女は訴えかけるような瞳と仕草で触れるのだ。
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