6人が本棚に入れています
本棚に追加
ある国で、ある王室にて一通の予告状が届いた。
――そこにはたった一文だけ添えてある。
『王女の涙を頂きに参上しに参ります。―タイムキーパー―』
そう。巷で噂のタイムキーパーが予告状をこの国の王室へ届けられたのだ。あて先は王女のティアル・ラルベリエである。しかも標的も彼女であった。だがしかし……。
「おい、あの鉄仮面の涙を奪うって」
「奪えるものなら奪ってみろ、って話だよな~」
「かわいそうとはいえさ~。あんな鉄面皮の女の子を攫っても…」
――別に痛くもかゆくもないな。
城の衛兵たちが笑いながら王女を罵り、笑っていた。その姿を見た無表情で無感情の王女は、気にも留めずに庭園へと向かった。
花々はたおやかで美しく咲き乱れているが、彼女の心を震わすものはない。しかしただ1つだけある。水のように澄んでおり透明なバラに似た花を愛で、彼女はぽつりと呟くのだ。
「……奪えるものなら奪ってみてよ。私はあの事件以来」
――涙も感情も枯らしてしまったのだから。
彼女がそう呟いて無表情にその花を…”センチメントティア”と名付けられたその花を、彼女は訴えかけるような瞳と仕草で触れるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!