《序章》時間泥棒とキザなインコ

3/4
前へ
/24ページ
次へ
「どう思う、ルゥ? あの無感情なお嬢様が涙を流すと思うか?」  双眼鏡で彼女を観察している銀縁眼鏡を掛けた青年は、首を傾げながら相棒の ルゥに声を掛ける。その黄色の身体をした彼……いや、は「ピィ」と高らかに声を上げて皮肉を述べる。 「僕は泣かないと思うね~。君が彼女を泣かせられるほど、イイ男だとは思わないから」 「うるさいな、インコの分際で」 「タイムキーパーじゃなくて呼ばわりされている君には言われたくはないね。ねぇ~」  ――タイムキーパー(時間泥棒)さん?  そんな彼は白いポンチョをなびかせて羽ばたいているインコを睨みつけた。すると彼は小さな鼻を鳴らし、身体を震わせて彼の肩へ着陸をする。鮮やかな黄色はまるでひまわりのような明るさを放っていた。 「ねぇタイム。どうしてあの子の涙を狙うの? あんなかわいらしい彼女を泣かせたくはないよ、僕は」 「鳥の分際でキザな風を吹かせているな~、お前は」 「タイムが幼稚すぎるよ。まったく、君は本当にいくつなの?」 「話が逸れているぜ、ルゥ。……あの子の涙を奪うわけ、ね」  双眼鏡を懐にしまい込み、右手の腕時計を掲げた。金色に輝く時計にニヒルに笑いつつ、彼は時間を確かめるように時計を見る。――時刻は16時を指そうとしていた。 「それで? コソドロさんは、どうしてあんなか弱そうな子の涙を狙うの?」 「コソドロじゃなくてタイムキーパーだって。まぁ、宝石のありかはお嬢様にも関係があるからな。それにだ」 「それに?」  言葉を切ったタイムにルゥが首を傾げる。するとまた彼は悪戯に笑って左に嵌めている時計を見せた。彼は変わった趣向らしい。そんな変人な彼に驚くべき変化が訪れた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加