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『ミスターと姫の邪魔すんなって言ってんだろ。マジうぜえんだわ、モブ子!』
ほらね、やっぱりか――、と肩を落として誰にも見られないようにカバンに片づけようとしていると、手の中から封筒を抜き取られた感触に顔をあげる。
「あ! ちょっと、」
私が止めるのを制した彼は勝手に手紙を読み、ふうんと面白くない顔をしている。
「まだ来てるんだ、こんなの」
180センチ近い身長から、私を見下ろす美しい人。
シャープに整った顔立ち、うつむき加減では長いまつ毛が憂いを称えたようなとも、まるで天使だとも噂される彼・桐生 來人くん。
彼こそが、この手紙に書かれている『ミスター』こと、ミスター花見が丘高校と呼ばれている人物だ。
「本当にくだらないよね。ふうちゃんもさ、イチイチ落ち込むぐらいなら、いっそ犯人捕まえて一回シメときなよ」
「シ、シメッ⁉」
「ふうちゃんが何も言えない女子だって勘違いしてんだよね? またグーパンチかましてやっつけちゃえばいいじゃん」
「ちょ、ちょっと待って! 主語がなきゃ、私が暴力的な女子だと誤解される!」
「え? そう? つうかさ、モブー子じゃないのにね、もう」
「うっ」
わざとブーを伸ばして、目を細めニヤリと笑ったその顔は、まるで悪魔のよう。
蛇ににらまれたカエルのごとく、言い返せずに固まった私を。
「ちょっと、待ちいや」
後ろから抱きしめる人がいた。
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