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私の耳元でドスの効いた低い声が、桐生くんに向かって。
「また、風花、イジメとるんか!」
「イジメてなんかないけど? 仲良く話してただけだし、ね、ふうちゃん」
「風花、ホンマに?」
「う、うん、話してただけだよ」
手紙からの一連の流れを説明したら『やっぱりイジメとったやんけ――!』って怒りかねないから、真相は伝えてはいけない。
「なんもされとらんね?」と私を抱きしめヨシヨシしてくれるのは『お助けヒーロー』ではない。
水木 咲綾こと、さあちゃん。
花見が丘高校1の美少女。
彼女こそ手紙に書かれていた花見が丘高校の姫である。
165センチのモデルのような高身長、柔らかな少し癖のある髪の毛、大きな瞳とツヤツヤでぷっくりとした愛らしい唇。
そこから発せられる弾丸のような関西弁はミスマッチだ。
「顔合わす度イチイチ突っかかってこないでよ、水木さん」
「ウチだってあんたに構いとおない! 風花の側に来んな、災いめ」
「それそっくりそのまま返すよ。大体さ、俺とふうちゃんは幼なじみだけど? 後から現れたエセ姫こそ、ふうちゃんに災いをもたらしてるんじゃない?」
涼しい顔して、さあちゃんを見下ろす桐生くん。
ちょ、幼なじみってほど長くいたわけじゃないし、さあちゃんにエセ姫とか失礼なこと言わないでよ。
確かに姫らしくはないけれども。
「それ言うんやったら、ウチは風花の親友やで? あんたこそ、ミスターだかウスターだか知らんけど、風花見つけると近寄ってきては、イジっとるやないけ! この、悪魔!」
さあちゃん、ウスターはソース! あ、悪魔は正解!
この二人、私を挟んで顔を合わせると、いつもこの調子なのだ。
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