ポケットに遺された一枚のメモ

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きっかけは1枚のメモだった。 古着屋で買った何の変哲もないシャツ。 そのシャツのポケットの中にメモと小さな鍵が貼り付けられていたのを見つけたのは買ってから1週間くらい経った時だった そこにはある駅の名前と3桁の番号、それから『太田義徳』という名前が書かれていた。 「この番号にこの鍵……もしかしてコインロッカーか?」 あまり使ったことはないけど確か駅のコインロッカーがこんな鍵だった気がする。 シャツの前の持ち主の忘れ物かと思ったが、ご丁寧にテープで貼り付けられているのを見るとわざとポケットに忍ばせて古着屋に売ったのだろうか。 普通ならこんなメモ捨ててしまってそれで終わりなのかもしれない。 だけどミステリー好きの俺としては好奇心がくすぐられてしまう。 「よし、行ってみるか」 もし何もなかったらそれはそれでいいだろう。 とにかくこれが何なのか気になるのだ。 幸いその駅はそこまで遠くなく電車に乗ってすぐに着いた。 コインロッカーを探し同じ番号のロッカーに鍵を差すとかちりと鍵の開く音がした。 「ほんとに開いた…」 まさか本当に開くとは思わず、途端に心臓の鼓動が速くなるのを感じた。 中には何が入っているんだろうか。 犯罪の証拠?それともまたなにかの鍵が入ってたり?まさか爆弾?…ってミステリー小説の読みすぎだな。 「どうせ何も入ってないだろ」 恐る恐る開けてみると中には色褪せた木箱と二通の封筒が置いてあった。 一方は『このロッカーを開けた方へ』、もう一方は『吉田喜美子様』と書かれている。 「…なるほど」 ますますミステリー小説のような展開にわくわくしてしまう自分がいる。
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