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緑の風のおかげで余裕をもって推定落下地点に到着したが、皇帝よりも頭一つ分以上は小柄で細身のビリーでは受け止められそうにない。このままでは落下する皇帝にぶつかって二人ともあの世行きだ。
(兄上、少しでも私を不憫に思うならどうか力を貸して……!)
自分とは違い一級の風術使いであった兄に祈り、ビリーは両手を掲げた。
手のひらに薄い緑色を帯びた風が渦巻き、広がりながら吹きあげる。透明感のある緑のヴェールとなった風が皇帝の玉体を包み、落下速度を緩やかにした。
少なくとも、先ほどよりは受け止めやすそうに見える。
というより出来る出来ない関係なしに、やらなければビリーに未来はない。このまま落下するのを見過ごした場合、皇帝を見殺しにした罪で処分される。
(私じゃこれが限界かぁ……骨折は覚悟しよう)
意を決し、体勢を整えて待ち構えたビリーの腕と腰にすさまじい衝撃が走った。追って痺れるように足が痛む。あまりに痛すぎて叫びが声にならない。
たとえ相手が皇帝であろうと、落ちてくる人を受け止めようなどとは二度と思わなくなるくらいの負荷がビリーの全身にかかった。
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