6-2 四年越しの邂逅

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6-2 四年越しの邂逅

「やめろ、ビリー・グレイ!」  もう一度同じ声が聞こえた。今度ははっきりと大きくビリーの鼓膜を揺さぶる。 「でも、殺さないと。こいつのせいで、父上と、ビリーが……」  ビリーはうわごとのように呟いた。手から流れる血を纏って赤くなったナイフが、害虫の喉に刺さりたがっている。 「何があったかはわからない。だからこれは、ただの俺のわがままだ。君が罪を犯すのは見たくない。どうか、やめてくれ」  後ろから肩と腰に手を回された。人と獣の中間のような、鋭利な爪を持ち、艶やかな毛に覆われたこの手を、ビリーは知っている。今まで何度も無遠慮に触られた。  ビリーの手から赤いナイフが滑り落ち、軽い音を立てて地面に転がった。 「まったく、目を離すとすぐに怪我をするな。治せるとはいえ、少しはこちらのことも考えてくれ。気が気ではないんだぞ」  フィオナによって傷付けられた頬の傷に、唇が触れる。この唇にも覚えがあった。  ビリーはしばらくぶりにまばたきをした。(かすみ)がかっていた視界がぱっと晴れた気がする。
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