軽すぎた消しゴム

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 ***  この町の随所に消しゴムが現れるようになったのは、今から二週間ほど前のことである。  ニュースや新聞で取り上げられても、最初は誰もそんな事件信じられなかった。それこそ宇宙人が来たとか、異世界人が侵略してきたと言われた方が信憑性があったかもしれないほどだ。  それもそうだろう。突然、大人の男の人以上の大きさ(高さ2メートルくらいだと聞いている)がある巨大な消しゴムが出現して、町の人に消しゴムをかけて消してしまう、なんて。  一体誰が、何のためにそんなことをするのか。あるいはあの消しゴム自体が意思を持っていてそのような恐ろしい行為を楽しんでいるのか。  正直、何一つわからないというのが実情だった。  ただ二週間も過ぎれば、みんな嫌でも信じる他なくなってくる。そして消しゴムの“法則”や“特性”くらいはなんとなく判明してくるというものだ。 「ついにこの小学校の子まで、消しゴムに消された」  生徒が消えてしまったことで、先生は対応に追われている。急遽自習になってしまった五年二組の教室で、真面目に勉強している生徒はほとんどいなかった。僕と、親友のセイくんも同じだ。  セイくんはいつもたくさん本を読んでいて(大人が読むような難しい本も読んでいると知っている)とても頭が良い。この現象について、独自に考察を続けているのだと言っていた。 「このままじゃ、この町の人間みんながあれにやられちゃうかもしれない。突然消されて、消しゴムの滓にされちまうんだ」 「い、嫌だよセイくん!僕そんなの絶対やだ!」 「俺だって嫌だ。だから、そうならないように俺達子供も真剣に考えなきゃならねえ。今まで消されるのは大人が多かったけど、今日小学校の子供も消えちまった。子供だって安全じゃないってことなんだから。というわけでコータ、お前は何か思いつかないか」 「え?う、ううん……」  コータ、というのが僕の名前だ。涙目になっていた両目をこすりながら、僕は腕組みをする。  こうすると、名探偵になったみたいで頭が回るような気がするのだ。気がするだけだけれど。 「……消しゴムは、今のところこの“春風町(はるかぜちょう)”にしか現れてない、よね」  この春風町は、埼玉県内にある小さな町の一つ。埼玉県春山市春風町。県内でも北の方に位置するということもあり、農業も盛んなのどかな町の一つである。  住民の数もそう多くはない。具体的に何人住んでいるのかは、授業でやったものの忘れてしまったけれど。 「で、突然出現して、人を最低一人は消す。時には三人くらい一気に消しちゃうこともある、と」
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