軽すぎた消しゴム

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「そうだ。今日消しゴムが出た時みんな慌てて校舎に逃げたけど、実はあれ意味がないんだよな。今までの情報によると、消しゴムは建物をすり抜けることができるそうなんだ。そして、最初に狙ったやつをどこまでも追いかけるらしい。……つまり、消しゴムは適当に人を襲ってるというより、“最初から消す奴を決めていて、そいつがいるところに出現してる”みたいなんだよな」 「そうなんだ……」  そのへんのことはニュースで見たのかもしれない。あるいは、TwitterのようなSNSで拡散されていたのだろうか。  現在春風町は、出入りがかなり規制されている。いつ消しゴムが現れて人が消えるかわからないせいだ。よその町の人ならば安全と言う保障はないらしい。  そもそも消しゴムが現れるのが本当にこの町だけなのか、この町の住人を全て消すまで続くのかもわかっていないという。 「消しゴムのサイズ、大きいよね。まるで巨人が手で持ってるみたいな動き方するし」  こう、と僕はジェスチャーをしてみせる。 「やっぱり、消しゴムを操っている誰かがいるのかな。で、消された人にも何か法則があるってことなのかなあ」 「現在、それはわかってないんだよな」  肩を竦めるセイくん。 「現時点で消されているのは、この春風町の住人ってだけ。で、老若男女問わない。悪い奴ばっかり消されてるのかとか最初思ったけど、今日消えたサナちゃん見てるとそんなことないってわかるだろ」  その通りだ、と僕も頷いた。サナちゃんは少し童顔で幼いところもあったけれど、いつも笑顔でみんなに優しく、可愛いので男の子にも人気のあった少女である。  犯罪者のように、存在を抹消されて然るべき理由があったとはとても思えない。  そういえば、消された人の中には警察官とか消防士とか、いかにも人の役に立っていそうな人もたくさんいたのだ。ならば、消しゴムが人を選ぶのにその善悪は一切関係ないということなのだろうか。  しかし、それならば何故“出現する前から標的を定めている”ように見える動き方をするのだろう? 「……この話さ。コータお前、他の人に言うなよ」  周囲をきょろきょろと見回して、セイくんは告げた。 「俺の親父が警備員やってるの知ってるよな?最近、隣町との町境に警備に駆り出されてるんだ。で、町の人が外に出ていくのを制限してる。混乱を招くことになるからってな」 「まあ、町の人がみんな町の外に避難しちゃったら困るもんね。経済回らなくなるし、そもそも町の外に行けば安全なんて保障もないし」
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