お隣の絃くん

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 学校から出て家の近くの公園に立ち寄った。なんとなく、まだ家には帰りたくなくて、あたしは空いていたベンチに座る。  初めての告白は見事に玉砕した。  コートのポケットには、まだクッキーが入っている。そっと取り出してみると、あのあと無造作に突っ込んだからだろう。歪なハートのクッキーはいくつか半分に割れてしまっていた。  吐き出した息が白い。吹き付ける風は冷たいのに、喉の奥が熱くなる。  俯いていたあたしの足元に、サッカーボールが転がってきた。 「すみませーん、蹴ってくださーい」  遠くから声がして立ち上がった。サッカーボールを蹴ろうとした右足は、思い切り空気を蹴り飛ばす。ふらついて落ち込むあたしの横から、颯爽とサッカーボールを取る人影が現れて、すぐにひと蹴り。  持ち主の所に真っ直ぐボールは飛んでいった。 「後で僕も混ぜてー!」  すぐ横でそう言って手を振るのは、隣の家に住む一つ年下の(いと)くんだ。  いつもあたしのまわりを駆け回っている元気で素直で可愛い男の子。
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