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成長期の絃くん
失恋は思った以上に心にダメージを負った。でも、あたしはこんなことでへこたれたくない。恋がなんだ。イケメンがなんだ。カッコよくてみんなに優しいなんて、そんなの嘘だ! あんな中身が優しくない男のどこがカッコいいんだ! 優しいんだ! みんなどうかしてる!
「また怒ってるの?」
クスクスと笑うのは、あたしの家のリビングで寛いでいる絃くん。
「広花ちゃんって、バレンタインが来るたびに不機嫌だよね? なんでなの?」
泡立て器を乱暴に動かすあたしに、ソファーの背もたれに顎をついて絃くんがこちらを見ながら聞いてくる。
「なんでもない」
あたしが真顔で答えると、絃くんは不思議そうにまた笑う。もう別に翔くんのことは好きじゃないけど、あの後からなんだか悔しくて。翔くんはあたしにあんな酷いことを言ったのに、見た目はカッコいいし、モテるし、他の女子には優しい。あたしはあの失恋以来、翔くんとは距離を置いている。別に、もともと仲が良かったとかじゃないし、あたしが勝手に一線置いているだけ。
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