成長期の絃くん

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 絃くんとは家族ぐるみでお付き合いがあって、家もお隣で小さい頃からうちに来ることはしょっちゅうだった。  だけど、今年の春、あたしが中学に入学してからは学校では会わないし時間も合わないから、なかなか姿を見ることもなかった。  バレンタインの今日、久しぶりにうちに遊びにおいでとママに呼んでもらった絃くん。  見上げるほどに身長が伸びていることに、あたしは今更気が付いた……  あたしが翔くんに振られた小学四年生の時は、絃くんはまだ三年生で、あたしよりもはるかに小さくて可愛かったのに。それに、去年まではここまでの違和感は感じなかったはずだ。 「最近成長痛ってやつかな? めっちゃ足痛いし、よく食うし、少し伸びたかも?」  嬉しそうに笑う絃くんは無邪気で可愛いけど。 「いや、少しどころじゃないでしょう⁈」  あたしだって日々成長している。クラスでもどちらかといえば大きい方だ。そんなあたしよりも大きいって……恐るべし成長期。心なしか…… 「声も……低くなってない?」 「うん……なんかずっと風邪ひいた時みたいな感じで、自分でも少し気持ち悪い」  喉元に置いた手。よく見ると骨張っていてスラリとしているけれど男らしい大きな手だ。視線をまた上へと上げると「ん?」と首を傾げる絃くんの表情に、全身がむず痒い感覚になる。沸々と何かが込み上げて来て、なんだか顔が熱い。
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