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「中学行っちゃってから全然会えなくなって寂しかった。だけど、今日いつも通りクッキー作ってくれるって誘ってくれて、すっごく嬉しかった」
「……うん。まぁ、毎年恒例だしね」
あたしが小学校の時にフラれたあの日、翔くんにあげるはずだったクッキーは絃くんにあげた。そしたら絃くんは「また僕にクッキー作ってね」と言った。
あたしはその約束を毎年守って、バレンタインには絃くんにクッキーを焼いている。それも、今年で三回目になる。クッキー作りもだいぶ上手くなった気がする。毎回絃くんは幸せそうな顔をして「美味しい」って言ってくれるから、作り甲斐もある。
「広花ちゃんが僕にクッキーをくれるのって、バレンタインだからだよね?」
「え?」
眉を顰めながら、絃くんはこちらを見る。
「僕は、広花ちゃんからのクッキーが毎回すごく美味しくて、嬉しいんだよ」
「……う、うん」
「初めて広花ちゃんがクッキーをくれた日、嬉しすぎて眠れなかった」
「え! そんなに?」
「うん」
あたしの驚いた反応を見ても、絃くんは真面目な顔を崩さない。
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