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「あの時はさ、バレンタインの意味もなんのことかよく分かってなかった。思わずまた作って欲しいってお願いしちゃったけど、その願いをずっと叶えてくれてるし、それも嬉しいんだよ」
目の前でココアのカップを持ち上げた絃くんが照れているのか、ほんのり頬が色付いて見える。
……あれ? もしかして。
あたしが翔くんにあげようと思って作ったクッキーは歪だったけど、ハートでラッピングの袋もハートが描かれていた。
あの頃の絃くんは小学三年生。バレンタインの意味を知らなかったけどって、今は知っているってことだよね?
あたし、もしかしたら絃くんに勘違いさせてしまっているのかもしれない。
だとしたら、ちゃんと謝らなくちゃいけないんじゃ……あの時のクッキーはバレンタインの意味はなくて、つい差し出してしまっただけなんだって。
「「あのさっ……」」
お互いに同じタイミングで言葉が重なる。だけど、あたしの方が早かった。
「ごめん‼︎」
「……え?」
「ごめんね、絃くん!」
俯いて頭を下げる。申し訳なくて顔を上げられない。ちゃんと正直に言わないと。
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