3.後悔

2/7
前へ
/39ページ
次へ
 * 「うっ、ううっ、うっ」  呻き声のような、何かを押し殺しているような、声。  振り向くと、誰かが蹲っている。髪が長く、つやつやと光っている。女だろうか。 「うっ、ううっ」  ――感情が喜怒哀楽、どれかに振り切ったら涙って出てくるし、何か刺激があれば、感情と関係なしに涙って出てくるんだよ。  田畑さんがそう言っていたな。目の前の女は少なくとも喜びで泣いているようには思えない。そこに何か感情を当てはめるとしたら、「哀」だろう。  何があったんだろう。 「大丈夫……?」 「信じて、いた、のに」  腕を掴まれる。爪が、食い込んでいく。 「た、田畑さ……み……みほ?」 「けい、くん」 信じて、いた、のに 「はっ」  また、変な夢を見てしまった。我ながら嫌になる。  ……蹲っていた女は誰なんだろう。  一瞬そう思ったが、すぐに考えるのをやめ、起き上がって身支度を始めた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加