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「大切な人が亡くなったら、けいくんは泣くんだ」
聞き覚えのある声。
さすがの俺も冷静だった。
田畑さんと話したその夜は、決まって夢を見る。
「泣くと思う」
「私がこんな目にあった時も泣いていたからそうだろうね。俺のせいだって泣いてたもんね。でも、それって、自分がかわいそうだからじゃ……」
「それはもう昼に聞いたよ」
怯まないように、語気を強める。
「俺は確かに自分を責めたし、後悔した。それが自分を思ってのことだって言われても仕方ない。でも!」
サラサラと髪が揺れ、振り向く。
……目の前の女は顔がまっさらの、のっぺらぼうだった。
「はっ」
冷や汗が体中だらだらと流れ、空気に触れると寒気がする。
こんな夢ばかり見るのは、きっと自分の中で心にこびりついているからだ。
だからといってどうすればいい。
悪いのは俺だ。そんなことはわかってる。
じゃあこの思いを吐露したら全て解決するのか。それこそ自己満じゃないのか。
「啓太~、起きなさい。学校遅刻するよ」
布団を払いのけ、パジャマを脱いだ。
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