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「啓太、おはよ!」
「はよ……」
「どうした? なんかいつもにも増して覇気がないぞ」
太陽のように、真司が眩しい。
「そうか……? 全然、いつも通りだよ」
「そんな風には全然思えないけど……」
「あ、あのさぁ」
「ん?」
「もし、真司が何かすごく後悔していることがあって、それを相手に話してすっきりしたいとして、話す? すごく自己満足だし、相手じゃなくて自分のためでしかないけど、それでも、話すかな、って……」
「……なんかすごく急だな」
真司はうーんと首をひねった後、「そうだな」と呟いた。
「俺はそういう立場になったことがあんまりないけど……世間一般では話さない方が美徳とされるんだろうなとは思うよ」
「やっぱり……」
「でも、そんなのどうでもよくない? 心の中で辛い思いがあって、苦しいなら楽になりたいと思うのが人間じゃない? 要はさ、啓太が話したいのであれば話したらいいと思うよ。自己満って言うけど、世の中の大半は自己満じゃない? そんな大義名分必要ないと思うけどな。啓太のことなんだから、啓太がそうしたいって気持ちが一番大事だと思うけど」
「そう、かな」
「そうだよ。だから、啓太が話したいと少しでも思っていたら、話したらいいと思うよ」
「ありがとう……」
絞り出すように声を出すと、そのまま視界がゆがんでいく。
「ちょ、おま、大丈夫か」
「わ、悪い、びっくりするよ、な。最近変な夢見ること多いし、悩んでいた、から。でも、大丈夫。ちゃんと、自分の口で、相手に言うよ」
目を擦る。
「俺は、俺の気持ちを大事にしていいんだって、思えたから」
真司がニカッと笑う。
「頑張れよ」
「おう」
空を見上げると、雲が覆いかぶさっている。けれど、そこに一筋の光が差し込んできてくれたような、ほがらかな気持ちになった。
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