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「苫田美穂子」と中心に書き、枝を伸ばしていく。
「田畑未歩からはみいちゃん、青木啓太からは美穂と呼ばれている」
「面倒見がよく、優しい」
「習字を習っていて、毛筆が二段、硬筆が初段だった」
「好きな食べ物はプリン」
次々に自分たちが既にわかっていることを書きだしていく。つまらないことでも、どんどん書こう、とシャープペンシルを手に取る。
「あ、そういえばさ、みいちゃん『ごんぎつね』が大好きだったよね」
「ああ……懐かしいな。『ごんぎつね読んだことある?』って聞かれて、ないって言ったら、絵本をわざわざ習字の時に持ってきてくれてさ……」
栗やきのこを持ってきていたのがごんだとわかり、「ごん、お前だったのか」のシーンは、当時小一だった俺も胸が苦しくなった。
ごんぎつねが好き、と書いたところで、気になっていたことを口にすることにした。
「そういえば、田畑さんと美穂って、なんで同じ髪型なの? やっぱり美穂を意識して?」
「意識、というか……。みいちゃんが、私の髪型を褒めてくれたの。『すごく、つやつやしてサラサラな髪だね。みぽりんみたいな髪になりたいなぁ』って」
「なるほど」
「みいちゃんの髪もすごくきれいなのに、そうやって言ってくれるなんてって、トリートメントも母親に頼んでいいやつ買ってもらったり、ヘアオイルつけてみたり、髪に気を遣うようにはなったな」
「へえ」
「そうやっていたら、みいちゃんと同じような髪型になって、二人で歩いていたら姉妹に間違われることもあってさ。『わたしたち、お揃いだね』って言ってもらえて、本当に嬉しかったの」
「そうなんだ」
俺も最初姉妹かな?と思っていたけれど、それはあながち見当はずれじゃなかったのか。
「だからいまだに髪には気を遣ってるんだ~。これが、みいちゃんとつながっている唯一のリボンみたいなものだからさ」
「そうなのか」
枝を伸ばし、「田畑未歩と姉妹に間違えられる」と記載した。
「ちょっと、こんなの書いてどうするの」
「だって事実じゃないか。俺だって間違えたし」
「みいちゃんがこんなの見たら苦笑いするよ」
「そうか? みぽりんと姉妹なんてサイコ~ってなるんじゃね?」
「ちょっと!みぽりんって言うな!」
「自分でポロっと言ったくせに」
ハハハと笑いながら、その後も樹木に実がなるように、枝を伸ばしてどんどん美穂のことについて書いていった。
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