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「へえ。じゃあ意図的に一緒に帰ることもあったというわけか。空想とかしてたんだっけ?」
「そうそう。海はなんでしょっぱいのかとかさ」
「人魚の涙、だろ。何度も聞いたよそれ」
ふう、と息をつくとこちらを見た。
「わかったよ。お前にとっては、美穂さんとは結構仲良くて、あの時逃げてしまったことをずっと後悔しているわけだな」
「……まぁ、そう、だな」
「お前の親友である俺としては『考えすぎだ』と言いたいところだが、それはお前に何も響かないことはわかっている。そこでだな」
ごくり、と唾を飲み込む。
「俺は、美穂さんが死んだ理由を少し調べてみようと思う」
「え」
「それで、お前のせいで死んだんじゃないって証明してみせるよ」
「で、でも、遺書も何にも残ってなかったんだぞ。そんなのって……」
「まぁ完全に無理なことはわかってる。推測で考えることもあるかもしれないけど……でも、お前がずっと苦しむことは、ないと俺は思うよ」
「……ありがとう」
真司はニッと笑う。
「それなら……なんだけど……」
「ん?」
「もし、人に聞き取りとかするんだったら、俺も、同席していいかな」
「ええっ」
「なんなら田畑さんも……。自分の罪を軽くしたいとかも、心の奥底ではあるかもしれないけど、俺たちも、美穂について知りたいって思っていて。だから、一緒に調べたいな、って」
田畑さんには一応聞いてみるけど、と付け加える。
「……いいよ」
真司はふわりとほほ笑む。
「美穂さんのこと、忘れないようにするためにも、そうしたいんだよな。いいよ。一緒に調べよう」
ありがとう、とか細い声で呟いた。
俺はあんまり友達が多い方ではないけれど、真司が友達でよかったと心から思えた。
窓から吹き込む風で、カーテンがふわりと舞い上がっていた。
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