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「災難だったな、啓太」
真司がニタニタ笑う。別に災難ってほどではないけれど。
「まぁ出席番号一番だから、課題を集めてチェックしなさいくらい起きそうなことではあるよ」
「いや~、めんどくさいだろ。日誌も書かないといけないし。手伝ってやりたいけど……これから部活だからさ」
「わかってるよ。部活に行ってきな」
「悪いな。じゃあな」
真司は手を合わせながらその場を去った。
課題をチェックするのは面倒ではあるけど、俺は帰宅部だし、適任だよなと我ながら思う。
まぁ急いでやればすぐに終わるし、早く家に帰ってゲームの続きを……。
「ねぇ青木くん」
「……へ?」
目の前の女子が長い髪をさらさらとなびかせながら笑みを浮かべる。
「なんで海はしょっぱいんだと思う?」
「……え」
硬直してしまう。
いつもの俺なら、「誰」とか「どうでもいい」とか思って適当に流すが。
……同じ、だ。
この女子、同じことを言っている。
「な、なんだよ急に。意味不明だし。てかあんた誰なんだ。なんで俺の名前知って……」
「ええ。私の名前知らないの? ホームルームで自己紹介したのに。私は田畑未歩。素敵な名前でしょ?」
でしょ?と言われても、どう反応するのが正解かわからず、顔が強張ってしまう。
「あなたの名前知ってるのは当然。あなたもホームルームで自己紹介してたからね。青木啓太くん」
「……すごい記憶力だな」
「そう? こんなの普通だと思うけど。ところで」
ゴホン、と咳払いをする。
「なんで海は、しょっぱいんだと思う?」
「知らない」
「なにその答え。私のこと突き放すつもり?」
ゾワッと鳥肌が立つ。
気持ち悪いを通り越し、怖くなってきた。
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