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「は?レンソウブ?」
「知らないよな……」
ふぅとため息をつく。
俺はいろんなことに無頓着だから知らないだけだと思っていたけれど、やっぱり真司も知らないか……。
「見たことも聞いたこともないな……お前、その部活に入ったのか?」
「入ったというか入らされたというか……」
「レンソウブって何する部活なの?」
「知らない……」
「知らないって、入部したんだろ?」
「断ると面倒くさそうだったから……」
「なんだそれ」
ハハと真司が笑う。
「その様子じゃあ部員が誰かとか、どこで活動するとか、何も知らないんだろ」
「うん。田畑さんが部員ってことと、毎週火曜と木曜に活動するってことしか……」
「お、田畑さんが部員なんだ」
「部員なんだっていうか……彼女から誘われたというか」
「田畑さんって髪が長くてサラッサラの子だろ。ありゃ相当髪に課金してるぜ」
「そうなのか」
まぁ確かに髪は綺麗ではある。
「モテるかどうかはわからないけれど、刺さる男もいるんじゃね。なんつーか清純派っぽい感じだし。去年とか隣のクラス遊びに行った時、席について本読んでたしな。大人しくてきれいめ的な」
「そうなのか」
「そうなのか…って、お前本当に何も知らないんだな」
昨日話した感じでは到底「大人しくてきれいめ」には思えなかったが、黙って座っていたらそう見えるのかもしれない。
「田畑さんとそういう関係になったりして、な」
「ないだろ」
「いや~、お前50メートル離れていたらイケメン俳優の福川の雰囲気に似てるし、ありえない話ではないと思うけど」
「それ褒めてるのか」
「褒めてるよ! ありがたく受け取ってくれ」
「ありがとう……」
50メートル離れていたらイケメンの雰囲気に似てるってすごく微妙な表現にしか思えないのだが。似てるならまだしも雰囲気に似てるってなんだよ、雰囲気って。
というかそもそも何で俺が田畑さんに好かれるか否かの前提なんだ。俺だって女を選ぶ権利はあるぞ!
「まぁ、部活に入ることはいいことだし、楽しんだらいいと思うよ」
「まぁ、な……」
一時的なつもりであるけどな。
空を仰ぐと、ムカつくくらい雲一つなく、透き通るような青だった。
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