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「それでさぁ啓太、カレンのグッズがさぁ……」
「青木くん!」
高くて綿のようなふんわりした声。
「田畑、さん」
「これから部活! 一緒に行こう」
目の前の真司がニヤニヤ笑っている。
「おうおう、田畑さん、こいつをお願いします」
「おい」
「じゃあ、一緒に行こう。羽村くんは?」
「僕も部活があるんでね。じゃあ二人、楽しんで」
ニタニタしながら教室を出て行った。
「じゃあ私たちも行こう」
「お、おう」
とりあえずついて行くが……。
「どこに、行くの?」
「ん?」
「いや、連想部の部室ってどこにあるのかなと思って……」
「ああ。これから社会科準備室に行くよ」
「……社会科準備、室?」
「うん。あそこなら人気もなくて静かだし」
……ん?
「部室、は? 社会科準備室を許可を経て正式に借りてるってこと?」
「正式な部室? ないよ」
「ないよ?!」
「うん。部員も私一人だけだったし。社会科準備室でのんびりしてたよ」
この人は、何を、言って、るんだ。
「部員が田畑さんだけって……それ部活というか、田畑さんが一人で勝手にやってることに過ぎないってことじゃない」
「そうだね。そういうことになる」
「そういうことになるって……じゃあ活動は主に何?」
「連想」
「は?」
「いろんなこと考えて楽しむ部活」
俺は、もう考えるのをやめた方がいいのか。
「今まで一人でいろいろ考えていたけど、一人で考えるのってつまんないんだよね。人と考えた方が楽しいと思うし」
「それで、俺を?」
「海がしょっぱいのはなんでって質問に対して、大抵の人が塩化ナトリウムが溶けているからみたいな『だから何』回答しかしてくれなかったんだけど、青木くんは『人魚の涙』って超クリティカルヒット回答をしてくれた。これはもう、ぜひ部員にしたいなと思ってね」
そういう理由……?
それに『人魚の涙』は俺が考えた答えじゃない。あれは……。
「青木くん?」
「……なんでもない。ちょっとぼーっとしただけ」
「いいね~。ボーっとすることも活動の一つだからね」
ボーっとすることが褒められるなんて、たぶん真司から羨ましがられるだろう。
俺としては、もうどうでもいい気分になってきたが……。
しばらくすると、社会科準備室に着き、ガラガラとドアを引いて開けた。
「ようこそ、連想部へ!」
満面の笑みで、田畑さんが振り返った。
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