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フェリーリ皇国玉座の間
「つまり領内は安泰と、そう考えて良い、と言う事ですね?」
近衛騎士団長、宮廷魔術師、冒険者ギルドマスターの報告を聞き終えた国王がそう締めた
フェリーリ皇国の重鎮が「ほぼ」勢揃いしている
「はい、陛下の命に従い、王都手前のふたつの領地に最終防衛ラインとして近衛騎士団と魔法兵団の大半を配備しております故、他国からの侵略は防げるかと」
「その代わり王都の守りと国境付近が若干手薄だけど…まあ、陛下達に我々がおりますので、王妃様の出番は限りなく無いかと…」
名指しされた王妃は軽く宮廷魔術師を睨んだ
「この前は私の出番があったのに…」
王妃が口を尖らせるのは、先だっての暗殺者と魔族の侵入を易易と許した事にあるようだ
「魔族の方は先代様が結界を強固にすると仰っておいででしたし…」
「暗殺者ギルドらしき連中も、何者かが全滅させたと聞きます…下手人は未だ見つけられてはおりませんが」
「ギルドの方でも情報を集めておりますが…国に仇なす者を滅してくれた以上、国賊ではないと思われます」
王妃の機嫌を取りなすべく、騎士団長、宮廷魔術師、ギルドマスターが口を開くが…どうも上手く行っているようには本人達も思っていないようだ
「3人とも、あとで王妃の剣の鍛錬に付き合いなさい、言っておくけどこれは王命です」
自分に被害が来ては堪らんとばかりに、国王が3人に命じる
「「「は…王命とあらば…」」」
3人が悲しそうにハモり、恨めしそうに国王を見つめる
因みに宮廷魔術師に至っては半泣きだ
「鍛錬は結構だけど、安泰とは言えないんじゃないかしら?」
左腕に羽繕い真っ最中の白い梟を乗せた、上皇妃が上皇を従えて入室して来た
先だっての騒ぎ以来、あっちこっちの部屋の扉が壊れたままなのだ
「えっと、お母様それは如何様な理由で?」
何時になく下手に出る王妃
流石に実母には頭が上がらないのだ
「はい、これ」
無造作に手渡されたのは、書いた相手の几帳面さが滲み出て来るかのような、丁寧な文字の並んだ手紙であった
その内容は…
「はあ?金剛石鉱山はフェリーリ皇国の領土外に当たる為、利権を渡せって言ってくる?しかも教国と帝国の両方から?渡さぬ場合は武力を持ってそれを…ふざけんじゃないわよ!!!!」
王妃が四人を振り返る
当然皆一様に首を傾げたり、左右に振ったり…要するに全員寝耳に水の話しなのだ
因みにその金のなる山々は皇国の中程、王都とふたつの都市のほぼ中間に聳えている
何でもとある冒険者達が鉄鉱石を掘る依頼中に、偶然発見したのだとか
金剛石は宝飾品だけでなく、魔除けや武具としても有用な鉱石であるが、取り扱いに細心の注意が必要なのと扱える職人が限られるのが難点
フェリーリ皇国には運良く?そちら方面の加工に長けた石の民、ドワーフ族が住んでくれているので困る事はないのだ
「ちょっと情報元は明かせないんだけど…ジョーンズ商会の支店に武器や盾、薬師ギルドには薬草の、大量注文が入ってるそうよ?何とか言い訳して遅らせてはくれてるみたいだけど」
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