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夜明け前ジョーンズ商会フェリーリ皇国本店前
「はあ、護衛役は僕だけですが…丁度お嬢様の向かわれる方角にしか生えていない薬草の回収が依頼で来ておりまして」
…まあ馬車2台で教国支店に何かと配達するだけだし、アメリア自身が隊商を率いる事になっているのであまり心配はしていないが
古代語魔法使いだけでなく知識神の神官も務めるのだ、多少の野盗や魔物の襲来くらいどうにでもなるだろう
隊商も腕に自信がある面子が揃っている事だし
しかしながら運の悪い事に、いつものパーティメンバーのキリー、ブレン、ジュリアンが揃って別件の依頼を受けているのは…やや心許ない
で、冒険者ギルドから紹介されたのが、薬師を本業とするブルースだけ、なのだ
そこはウィンディも済まなさそうだったが
ただ、商会を束ねる両親からは絶大な信頼を得ているのでは…娘としては信じるしかあるまい
「お嬢様が不安に思われるのも無理はありませんよねぇ?でも僕も一人で行動する事が多いので、そこそこの腕ではありますよ?」
それは…そうですね…
アメリアとしてはそう答えるしかない
薬草とは言っても、何もかもが森や草原の安全な場所に群生しているわけではなく、魔獣の棲息するような危険な場所に足を踏み入れる必要もあるのだから
それにいつぞやのグレーターデーモンどもとの一戦、ブルースが用意してくれた魔導具のお蔭で、こうして生きているのも事実
「大丈夫ですよ〜?僕の見立てじゃあ今回もきっと何事もなく上手く行きますって〜」
何故か妙に自信たっぷりに笑顔で言われると…本当に何事もなく行って帰って来れると思えて仕方がなく、ついつい彼女自身も笑顔になってしまう
えー?ブルースさん、それって何か根拠でもあるんですか?
「強いて言いますと…僕の勘ですね!フェリーリ皇国の誇る美少女冒険者が笑顔でいれば、大概の不幸は除けて通れますって!…あ、今のはソフィには内緒と言う事で…」
何だろう…この安心感は…
自分より年上なのに冒険者としてのレベルは高くない、そんな森の民の言葉が魔法のようにアメリアの心を軽くして行く
「心配性ですね~?でしたら馬車に魔物除けの薬草袋をぶら下げておきますから!…まあこの世で一番怖いのは人間、ですがね」
そんな便利な薬草があるのか…思わず感心してしまったアメリアだが、ブルースの準備の手際の良さには舌を巻かざるを得なかった
では父様母様、行ってまいります
見送りに出て来てくれた両親に一声掛けて、アメリアは馬車馬の手綱を押して隊商を出発させた
何故か異常に陽気で暢気な、森の民の薬師だけを護衛役に
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