エピローグ

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 壱護もかつてフィギュアスケートをやっていた。  それこそオリンピックを夢見て頑張っていた。  だが親は今だけの遊びとしか捉えなかった。  壱護がジュニアの大会で優勝しようが、いずれ過ぎ去る過去の栄光に過ぎないと思っていた。  そんなことより勉強して、立派な医者になり淡雪総合病院を継ぐことこそが、何よりの望みであった。  怪我を機に辞めて以来、スケートは一切やっていない。  かつてのライバルたちが夢の舞台で華々しい結果を残す姿を、TVの画面越しに見つめる。  インタビューでは「ここまで応援してくれた家族には感謝しかない」という選手がほとんどだ。  スケートを続けることも、大舞台で結果を残すことも、家族に認めてもらうことも壱護には叶えられなかった夢だった。  そんな空虚な気持ちに蓋をするかの如く、がむしゃらに勉強して外科医となった。  壱護にとって、杏葉はスケート選手だった十代の自分が欲しかった存在だった。  どんな時でも味方になって、全力で応援して支えてくれる。自分の頑張りを誰よりも喜んでくれる。  それは誰にでもできることじゃないとわかっていたからこそ、早い段階で杏葉に心惹かれていた。  世間のイメージとは大きく異なる杏葉のギャップを知る度に、もっと彼女を知りたいと思った。  本当は不器用でポンコツなところがかわいいと思った。
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