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彼女はどんな事件でも即座に解決してしまう。はじめて探偵活動をしたのが高校二年生のとき。高校卒業後は大学に進まず私立探偵となり、今年でもう四年目だけれど、例外はない。本物の天才なのだ。幼馴染の僕は、誰よりもよく知っている。
「そもそも小説と現実は違うからねえ。ゲームと同じだよ。小説は面白くなるように工夫してつくられてるけど、現実の事件は馬鹿な人の馬鹿な行為でしかないわけで」
「頭が良い犯人だっているだろ」
「ないない。頭が良いなら、殺人なんて方法じゃなくて問題を解決できるもん。そういうお馬鹿さんのおかげで、私が楽にお金を稼げるんだけどさ。わっ、またエンカウント?」
「だけど、現に桜野美海子は上手くいってる……」
「小説にしてる人の能力が高いんじゃない? つまり、まずは道雄が書いてみなよーってこと。半年くらいずっと同じこと云い続けて、まだ一作も書いてないじゃん」
おっしゃるとおりだ。ぐうの音も出ない。
僕が黙り込むと、千鶴は「まあ、焦らなくてもいいでしょ」とフォローの言葉を足した。
「ゲームと同じだよ。じっくりレベル上げも大事。早くなにかやりたいって気持ちは分かるけどね。このままじゃあ道雄、永遠に私のヒモだし」
「ヒモではない!」
「じゃあ運転手?」
「そうだね……」
助手と主張できるほどの働きはしていない、気がする。
「あっ、そこ寄って。ダブルチーズバーガー食べたい。買って帰ろ」
「了解……」
3
千鶴と僕は、都心にある高層マンションの十八階に部屋を借りて同居している。高校卒業後、便利だからという理由で上京する彼女について行ったところ「じゃあ一緒に住も。その方が経済的だし」と云われ、そうなった。
僕らは千鶴の探偵業で生計を立てている。それだけで充分以上の稼ぎがある。僕はせめてもの貢献として家事を率先し、千鶴は家にいるときはゲームばかりしている。
「うわ、こいつ堅すぎ! マコりん育成しとくんだったあ。ま、今回は問題ないけどね。はい、メチレンジオキシメタンフェタミン!」
三田池邸から帰ってハンバーガーを食べた後も、ソファーに寝っ転がってひたすらゲームだ。彼女はミステリにはまったく興味がない。ミステリの熱心なファンは僕の方で、彼女に探偵活動を勧めたのも僕だった。彼女がそれを職業にした理由は単に割りが良いから。
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