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4手目
◉町です!
「さーて、着いたわよ。町の右側に食堂が1軒あるから行きましょう!」
まずは食事。何をするにも空腹のままでは始まらない。
店に入っても店員は何も対応してくれなかった。だが、こちらには気付いているようだ。注文が決まるまでは対応しないということだろうか。まあ、異世界なのだから文化が違うのは当たり前だ。それはいいが、とりあえず、メニューの文字が読めないのが困った。
「エル、なに頼んだらいいか分からないから全部任せていいかな。なんせ読めないからさ」
「あー、そっかそっか。じゃあ読めるようになる魔法そのうちかけるね」
「今じゃないんだ」
「魔法は力使うからね。今はほら、お腹が空いて力が出ないの。だから今日のユキのぶんは私と同じの頼んじゃうね。それでいい?」
「それでいいわ。好き嫌いはないから特殊なものさえ注文しないなら多分、大丈夫」
メニュー表の読めない文字の最後には必ず似たような形状の文字が並んでいた。
(ははあ……これは多分数字のようなものかな。おそらく値段だ。良かった、数の概念はあるようね。数の概念のない世界で麻雀を1から教えるのはさすがに骨が折れる。数字のある世界ならやりようはありそうね)
ーーーーーー
ーーーーー
「ふーーー。お腹いっぱいです。ごちそうさまでした」
クリポン族は身体が小さいからか少量の食事でも満腹になれた。これ以上は入りそうにない。
「少し残ってるのは私がもらうね」
「いいよ、エルに出してもらうんだし。好きにして」
2人とも食べ終わったので店を出て町の中を探索した。まずはリュックが欲しい。カバンなどが売っている店を探す。
「ねえエル。文字が読めないのが不便だからコレをなんとかしてよ」
「ええ〜…せっかく食べて力回復したのにもう使うんですか〜。夕飯の時間まで待たない? 今翻訳の魔法みたいな大技使うとまたすぐお腹空いちゃうからさあ」
魔法を使うと腹が減るというのは私には分からない感覚なのでなんとも言えない。エルにそう言われては待つしかなかった。
「じゃあ待つことにするから、その代わりリュックを買って。麻雀マットを突き刺せるくらいのやつ。もう、持ちづらすぎてコレ」
町の中心部にカバン屋さんはあった。そこでエルに水色のチェック柄のリュックを買ってもらった。とても可愛いデザインだ。
「ちょうどいい大きさだ! 良かった〜。あ、じゃあ早速」
ブン!
空間からペンを出す『ネームペン』のスキルを発動させ、リュックに名前を書いた。
「『スノウ』……と」
(この力、便利だなー。これでもうひったくりとかにあっても紛失しないんでしょ? どんなからくりかはまるで分からないけど、初めての海外に行った時みたいな不安はしないですむのが本当にいい)
「あとは服でも買いますか。今着てるのは私が念で簡易的に作ったものですけど、もっと可愛いのがいいですもんね」
「えー服も買ってくれるの〜? ふんふん〜♪ お買い物楽しいなー」
「スノウはご機嫌ですね。元の世界のこととか気になったりしないんですか」
「まあ、来たもんは仕方ないし、この世界きれいで気に入ったし。あとはミサトさえ見つかればなーって思うだけ」
ユキはとにかく逞しかった。死んだわけじゃないしいつか帰れるだろう。という考えで異世界転移を海外旅行感覚で楽しむことにしたユキなのだった。
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