スノウドロップ〜ゼロから始める異世界麻雀教室〜

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5手目 ◉無敵です! 「さて、買い物もしたことだし一旦宿に行ってこれからのこととか話そうか」 「いいけど、ご飯食べたり宿に泊まったりと…エルって神様なのにずいぶんと人間っぽいのね」 「カミサマって言っても生きてるからね。魔法は疲れるから滅多に使わないし。カミサマというより『(おさ)』に近いのかな。『ダイトーリョー』とか」 「私のいた国には大統領はいないけどね」 「あー、ニホンは『ソウリ』がボスの呼び名なんだっけ」 「そうそう、内閣総理大臣」 「ナイカクソウリ?? あ、宿みっけ」  宿屋は無人だった。その都度お金を入れることで解錠される仕組みになっており時間制で借りるのと1日単位で借りるのと選べるようになっていた。食事は用意されないらしいが飲み物だけでなく食べ物の自動販売機もあるのでそこから選ぶことができた。 「とりあえず10時間借りよう。しっかり寝たいし」 「そうね」 ーーーーー  部屋は想像してたよりずっと豪華だった。宿っていうから田舎だしてっきり民宿みたいな感じで考えてたけど、これはホテル。しかもホテルの中でもかなり上等な感じがする。さすが神様が借りる部屋なだけはあるなと思った。 「あー、あのさあ。クリポンの姿から人間に戻ることとかできないのかな?」 「できるけど、今やると服が破れますよ」 「そっか、まあいっか。戻れるならいいの」 「そのうち自分で変身できるようにしますね。今日はもう、今から翻訳魔法使うからそれでおしまいです」  そう言うとエルは私の額に手をかざした。 「んーーー〜〜……はいっ!!」 「おおおおお!?」  するとさっきまで何と読むかわからなかった自販機の飲み物が読めるようになった。 茶 水 栄養ドリンク 「読める!! すごいすごーい! さっきまで読めなかった文字にフリガナがふってある! これでもう無敵だあ!」 「字が読めるだけで無敵な気持ちになれるなんてユキはすごいですね」 「『スノウ』ね。もう慣れておきたいからこっから先はずっと『スノウ』って呼んでね」 「そうでした、すみません。自分で命名しておいて…。スノウは名前ほんとに気に入ってくれたんですね」 「『スノウ』って結局『雪』だからね。大統領の国の呼び方にしただけ」 「そうなんですね! そんな偶然が」 「知ってて名付けたんだと思った」 「たまたまです。それより、もう、疲労困憊なんで…ご飯と飲み物買って休憩したいです」  そう言うとエルは自販機でお茶とうどんを購入した。 「スノウも食べますか?」 「私はまだ大丈夫。お水だけ欲しいかな」 「わかりました」 「よっ、と。重かった〜」 ドサッ!ガジャッ! 「ふーーー……さてと」 カパッ  スノウは麻雀セットを開いた。綺麗な黄土色の練り牌がそこにはピシッと整頓されていた。そして、点棒、チーチャマーク、サイコロ。不足のない完璧な麻雀セットだ。 「スノウ、その『サイコロ』って言いましたっけ?色々な遊戯で使われるそれ、麻雀にも関係あるのですか?」 「あー…よく調べましたね。……確かに今どきはもうサイコロは無くてもいい時代なんだけど、とりあえず基本は2個使うものなの」 「へえ……でも、それサイコロ5個入ってますよね? 予備だとしても多くないですか?」  たしかに、エルの指摘は正しかった。普通、麻雀セットにサイコロは2個。予備を入れていても3個しか入ってない。それが5個とはいったいどういうことなのか。 「うん、これはね。私とミサトが麻雀を教える時に使ってたの。私はこの5個のサイコロを使ってこの異世界でも麻雀を教えてみせるから!」 「サイコロを使って?」 「そう!」  そう自信満々に言うとスノウは麻雀セットから5個のサイコロを取り出した。
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