雪合戦がしたいだけ

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 あの日、初めて同じ年くらいの子たちとあえて浮かれていた。嬉しくてはしゃいでいたと思う。次は雪だるまを作ってみようか、かまくらを作ろうか。いろいろ考えながら本気で雪合戦を楽しんだ。  雪玉を作っては投げ作っては投げ、次々とみんなに当たっていく。そして最後一対一の雪の投げ合いをした相手にも、とうとう雪玉が当たって。自分の勝ちだと喜んだのも束の間。 出ていけ。 あっち行け。 こっち来るな。  いろいろなものを投げられた。ちょっと待って、と言おうとしたものの。皆が鬼のような形相で雪玉を、氷を、石を、次々と投げて来る。一人勝ちしたから、嫌われてしまったらしい。それでもあの時の楽しさは今でも胸に残っている。  ペシペシ、と雪を固めてかまくらに積み上げ。道具を使って細かい部分も削っていく。あまりにも暇なのである。  どうやって遊べばもっと仲良しになれたのだろうか。楽しかった思い出と一緒に、ちょっと切なくなる。もっと遊びたかった。わざと負ければ、仲良くなれたのだろうか。友達なんていなかったから、何を間違えたのかわからない。  しゅん、としながらぺしぺしと雪を固めつつ。表面に、樹氷を思わせる彫刻を施して。 (できちゃった。これで何個目だ)  一体いくつかまくらを作っただろうか。見渡せばいろいろなものがある。 (かまくらも、誰かと一緒に作ったら楽しいのかもなあ)  また寂しくなって、今度は雪だるまでも作ろうと雪玉をころころ動かし始める。何せ自分の背丈より高い位置まで雪が積もっているので、少し転がせば巨大な雪玉となる。  というより、山の上から落とせばあっという間に勝手に転がる。そういえばこれも雪合戦の時使った手だ。みんなキャーキャー喜んで避けていたけれど。投げずに、転がすという手を使ったから卑怯だと思われたのかもしれない。 「……?」  今、吹雪の中何か聞こえた。音? いや、声だ。 「寒いよお! 氷るわ! やだークッソ寒い! ちょっと普通の吹雪よりすごすぎない!?」 「!」  誰かいるんだ。嬉しくて、一気に斜面を駆け下りた。なんかもう走るのも面倒なので一気に地面に向かって飛び降りる。そしてモコモコの凄い上着を着ている……暑くないのかそれ、と言いたくなるような凄い防寒着をしている者の前に着地した。 「うお!?」
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