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突然目の前に降ってわいたのだから驚いただろう。しまった、第一印象大事なのに。また失敗したら大変だ、と少し慌てる。
「……」
「えっと……」
「……あ、あーあー、あーうーえー」
「え、なにしてんの?」
「声出すの久しぶりだから。ちゃんと声出るか不安になった」
「そんな引きこもりニートレベル80の子供部屋おじさんみたいな事言うなよ」
「……こ、コンニチハ?」
「あ、はい」
しーん。会話が途切れる。次はなんだ、何喋ろうと焦っていると。目の前の男は悲痛な表情だ。
「寒い!」
そっか。寒い寒い言ってた。寒さを凌ぐのが先か、と良い案を思いついた。
「あ、あっちに。かまくらがある」
「かまくら。もうそれでいい、せめて吹雪が凌げれば! 風あるだけで体感温度マイナス三十度くらいに感じる!」
ちょっと何言ってるかわからないが、寒いらしいのでかまくらに案内した。
(よかった、いっぱい作っておいて。ちゃんと中で暮らせるように座敷とか階段とか作ったし)
「いっぱいあるから、好きなの選んで良いぞ」
わくわくしながらあれ、と指さす。
「たくさん? って、でけえええ! つーかどんだけあんだよ!」
「数えるの面倒になったからわかんない」
「アナ雪もびっくりな城建ってるやん! あっちは何あれ青葉城!? 天守閣みたいのある! 1/1スケールの東武ワールドスクエアみたいになってる! 札幌雪まつりが五段階くらい進化したみたいになってる!」
「穴雪? 頭部悪井戸助平? 殺法雪まつり?」
知らない単語に首をかしげる。
「いやもういい、じゃあそこの凱旋門みたいなやつに入れて!」
二人は一番近くにあったかまくらに入った。
「ふいー。やっぱ風がないだけで違うな。寒いっちゃ寒いが、これくらいはなんとかなるわ」
改めてお互いを見つめる。相手は大人だ。けっこう着込んでるし、顔まで雪まみれだから全然顔見えないが。
「えっと。俺はヒナゲシっていうんだけど。この辺りに、男の子が一人いるって聞いて」
「俺」
「だろうね」
(なんかおもてなししないとな)
「まって、お茶はないけどお茶請けならある」
「え、マジ? うれしい」
喜んでくれている。そのことが嬉しくてウキウキしてきた。お茶請けは丁度このかまくらの中にとっておいた。よいしょ、と抱えて持ち運ぶ。
「お茶請けと言わず鍋とかだと嬉しい……って熊じゃねえか! コエーよ!」
「じゃれてきたから、遊んだら死んじゃった。どこ食べる?」
「いや、遠慮します!」
「そっか」
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