雪合戦がしたいだけ

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 びゅおおおおお、と猛吹雪が轟音を立てる。真っ白、その風景以外見たことはない。もうかれこれ、どのくらい一人だろうか。 (ひまだ)  声には出さない。声に出しても、聞いてくれるのは自分だけ。誰もいないから、声は自分にしか届かない。吹雪にかき消される。  ぎゅ、ぎゅ、っと雪玉を作ってみる。 (雪合戦したいなあ)  最低でも二人いる。一人きりの自分では、できるわけもない。出来る事といえば雪だるまを作るか、かまくらをつくるか。ただし、吹雪によって三秒でただの雪の塊となるので意味はない。 (遊び相手がほしい。いやもう贅沢言わないから話し相手がほしい)  一人だけだ。たった一人。ヒマなので、ちょっと本気出して作ってみよう選手権をやっている。何を作っているか? 本気を出したかまくらだ。  本気のかまくらは、造形美を入れるとどれだけ凄いのか。吹雪を避けられる防御壁をまず作って、その中に本気のかまくらを作っている。おかげで雪にあまり埋もれずにつくれている。完全には防げないから、雪がつもったところはよじ登ってはらったりしてる。  手間暇さえ愛おしい時間だ。だってやることないから。いや本当に。 (遊び相手、こないかな)  ぺたぺたと雪を積みながら巨大なかまくら……かまくらというかかまくらの域を超えたものを作り続ける。  以前は遊び相手がいた。雪国で生まれ育ち、いつも一人だった。雪は辺りをすべて真っ白にしてしまう。木も、土も、岩も、川も。すべて雪が包み込み。角、直線、色、すべてをまあるく曲線に。真っ白な風景にしてしまう。  雪以外何もない。誰もいない、動物も冬眠して姿が見えない。絶対的な孤独の中で生きてきた。  ちょっと他の所に行ってみようかな。よし、と決意して気合を入れた。ボロボロだったかんじきなどを一新し、すべてを新品にして歩きだした。  どのくらい彷徨ったか。一人、二人とちらほら人影が。嬉しくなって駆け寄って。遊ぼう、と誘った。  わらわら、っと十人くらいだろうか。そのあたりに住む者達が集まってきて、嬉しくなった。こんなにいたんだ、友達になれるかもしれないと雪合戦を始めた。
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