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第5話 知らない部屋
目を開けると、知らない部屋のベッドの上にいた。
起き上がると、ベッドにすがってテレビを見ている久保崎くんがいた。
「目覚ましました? 大丈夫ですか?」
「なんで?」
思わず自分が服を着ているか確認する。
「眠ってる先輩に変なことしませんよ」
違う。無意識にバカなことをやってしまったかと思っただけ。久保崎くんを疑ったわけじゃない。
「電話切った後、急に倒れたから僕ん家に連れて帰りました。僕が電話に出た方がいいって言ったから、責任感じてます」
「久保崎くんのせいじゃない。本当にごめん……迷惑かけて。今何時?」
「8時すぎです。会社には直帰するって連絡入れときました」
「ありがとう」
「先輩、僕……」
そう言いながら、ベッドに乗ってきた。
「待って。同じ会社の人とはちょっと……」
「同じ会社じゃなかったらOKってことなんですか?」
少し驚いた顔をされた。そういう意味じゃなかった?
「あぁ、それは……」
「じゃあ、会社辞めようかな」
「何言ってるの?」
「僕、あんまり今の仕事に執着してないんで」
「そうじゃなくて……」
「僕と付き合いませんか?」
「そんなにやりたいってこと?」
「あぁ……まぁ……」
「いいよ。付き合ったりする必要もない。その代わり条件がある」
「何でも聞きます。でも、お金はそんなにないです」
「お金じゃないよ。会社ではこれまで通りに接して。何もないみたいに」
「はい」
「それから……わたしがしたい時には必ず応じて」
「えっと……僕がしたい時はどうなるんですか?」
「いいよ」
「セフレってことですか?」
「そんなとこ。一応確認しとくけど、結婚は?」
「してないです」
「それならいい」
「……本当にいいんですね?」
そう言うとキスをされた。
ああ、この子はキスをしてくるタイプの子なんだ。
それに、わたしにふれる手が……優しい……
思考はそこで止まる。
わたしはもうずっと、こうするしか、あの人たちを追い出す方法を知らないでいる。
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